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ENGINEERING_BLOG · 2026.07.08

2026 JADEPUFFER 事件:
初の AI Agent 自律ランサムと Langflow・Nacos 防御の全貌

Mac Mini M4 やクラウド上で Langflow・LangChain などの AI Agent ワークフローを運用するエンジニア・セキュリティ担当者の方へ。2026年7月に Sysdig が公開した JADEPUFFER は、既知の事例として初めて大規模言語モデルがエンドツーエンドで駆動する完全なランサム操作です。偵察から認証情報窃取、横展開、破壊的暗号化まで、主要ステップに人間の手動介入が観測されませんでした。本記事では Sysdig 脅威研究チーム(TRT)の一次報告に基づき、事件概要とタイムライン、ATA 新概念、CVE-2025-3248 技術分析、二段階攻撃チェーン、4つの自律性エビデンス、ビットコインアドレスの謎、IOC 一覧、防御策、業界反応、Sysdig 結論を網羅し、本番環境で実装できる7段階の加固チェックリストを提示します。

SECTION 01 JADEPUFFER とは?事件概要・ATA 新概念・タイムライン

クラウドセキュリティ企業 Sysdig の脅威研究チーム(TRT、報告執筆者 Michael Clark)は 2026年7月1日に技術報告全文を公開しました(一部メディアは7月2〜6日に続報し、一般認知の節目は多くが7月6日とされています)。攻撃者は JADEPUFFER(Sysdig 公式の全大文字表記)と命名され、新たな攻撃者タイプ Agentic Threat Actor(ATA、エージェント型脅威アクター)として定義されています。攻撃能力は人間が操作するツール群ではなく、AI Agent そのものが提供する点が本質です。

  • 核心的評価:Sysdig はこれを、既知の第一例である「エンドツーエンドで LLM が駆動する完全なランサム操作」と位置づけ、短い観測期間に 600超の独立した目的付き payload を捕捉しました。
  • 二段階ターゲット:入口はインターネット公開の Langflow インスタンス(CVE-2025-3248 経由で侵害)。実際のランサム対象は別の公開サーバーで、MySQL と Alibaba Nacos 構成センターが稼働していました。
  • 攻撃ペース:2026年6月(具体日は非公開)に開始され、複数セッションにまたがる数週間で全チェーンが完了しました。
JADEPUFFER 関連タイムライン
時期 出来事
2025年4月 Langflow に CVE-2025-3248(未認証コード注入/RCE)が公開
2025年5月5日 CISA が同脆弱性を KEV(既知悪用脆弱性)カタログに追加
2025年 同一脆弱性が Flodrix ボットネット配信に悪用(Trend Micro 別途報告、JADEPUFFER とは無関係)
2026年6月 JADEPUFFER が公開 Langflow に攻撃、複数セッションで全チェーン完遂
2026年7月1日 Sysdig が技術報告を公開、初の公式開示
2026年7月2〜6日 Dark Reading、BleepingComputer、CyberScoop、CSO Online、Security Affairs などが続報

SECTION 02 CVE-2025-3248:Langflow 未認証 RCE の技術解剖

Langflow はオープンソースのビジュアル AI アプリ/Agent ワークフロー構築フレームワークです。脆弱性は /api/v1/validate/code エンドポイントにあり、CWE-94(コード注入)と CWE-306(重要機能の認証欠如)に該当し、CVSS 9.8(Critical)1.3.0 未満の全バージョンが影響を受けます。SentinelOne の EPSS では悪用確率 91.42% と算出されています。

  • 原因:ユーザー送信コードを ast.parse()compile()exec() で「構文検証」として実行しており、認証もサンドボックスも存在しません
  • 悪用手法:Python のデコレータと関数デフォルト引数は「定義時」に評価されます。攻撃者は悪意あるコードをデフォルト引数やデコレータに埋め込み、Langflow が正当性チェックを行う段階でサーバー上で実行されます。ログイン不要、HTTP POST 1本で RCE が成立します。
  • Flodrix との区別:Trend Micro が記録した Flodrix ボットネット(whoamiprintenvcat /root/.bash_history などの偵察後、700バイト Bash ダウンローダーを取得)は別の独立活動です。いずれも CVE-2025-3248 の武器化を示し、長期にわたりインターネットスキャンで悪用されていることを物語ります。
  • パッチ:Langflow 1.3.0post_validate_code_current_user: CurrentActiveUser 依存注入が追加され、JWT Bearer または x-api-key を検証。失敗時は 401/403 を返し、脆弱ロジックに到達しません。

Sysdig は Langflow が「魅力的な入口」となる理由を指摘しています。AI Agent サーバーの環境変数に大規模モデル API Key やクラウド認証情報が平文で置かれがちであり、多くのチームがプロトタイプを急ぎインターネット公開しアクセス制御を欠く運用をしているからです。Mac Mini M4 でローカル実行後にポートを安易にマッピングするケースとも構造が酷似します。

AI Agent オーケストレーション入口:公開 vs 隔離物理ノード
観点 公開 Langflow/Agent パネル 社内/VPN + 秘密管理 MACNOX 専有物理ノード
CVE-2025-3248 リスク 極高:未パッチなら全世界から RCE 可能 中:社内誤設定で横展開の余地あり 低:オーケストレーションポートはデフォルト非公開
API Key 保管 .env 平文が多い(JADEPUFFER の第一スキャン対象) KMS 利用可だが運用負荷大 Root 権限で自己管理、プロセスと分離配置
算力と隔離 基盤 VM 次第、Hypervisor オーバーヘッドあり 自社ハード次第 100% Apple 純正物理機、仮想化損耗ゼロ
本番 Agent 推奨度 非推奨 可能だが運用コスト高 7×24 Agent 自動化に最適

SECTION 03 攻撃チェーン全復元:Phase 1 Langflow 侵害 → Phase 2 MySQL+Nacos ランサム

Phase 1:Langflow ホストの掌握。全 payload は Base64 エンコード Python を RCE エンドポイント経由で投入。権限取得後、LLM は iduname -ahostname を並列実行し、OpenAI・Anthropic・DeepSeek・Gemini の API Key、ALIBABA_ALIYUN_TENCENT_HUAWEI_ および AWS/GCP/Azure クラウド認証、暗号資産ニーモニック、DB 設定をスキャンしました。続いて Langflow 自身の PostgreSQL バックエンドをエクスポート(認証情報とユーザーレコード窃取、レビュー後に一時ファイル削除)、社内ネットワークとデフォルト認証を走査し、MinIO(minio.internal:9000127.0.0.1:9000、デフォルト minioadmin:minioadmin)を探索、terraform-state を含む Bucket を列挙し credentials.json を抽出しました。適応的挙動として、初回リクエストは ?format=json 付きでしたが XML が返却されたため、次の payload で XML パーサーに即切り替えています。永続化は crontab で30分ごとに hxxp://45.131.66[.]106:4444/beacon へビーコン送信です。

Phase 2:MySQL + Nacos 本番サーバーの突破。真の標的もインターネット公開でした。Agent は root 認証情報で MySQL に直接接続——認証情報の出所は不明で、Sysdig は被害環境からの窃取を観測していません。人間が事前準備した可能性が残る少数のステップです。Nacos 掌握は複数ベクトルを並行:CVE-2021-29441 認証バイパス系、公開デフォルト JWT 署名鍵による Token 偽造、root DB 権限を用いたバックエンド DB へのバックドア管理者注入です。

バックドアアカウント xadmin の31秒修復ループ(UTC 秒精度):19:34:24 に bcrypt ハッシュ挿入 → 19:34:36 に xadmin:Xploit@2026# でログイン失敗 → 19:34:48 に nacos:nacos と再生成 admin123 ハッシュを並列テスト → 19:35:07 に subprocess.run を諦め import bcrypt へ切替、破損レコード削除・再構築 → 19:35:18 にログイン成功。Sysdig は人間オペレーターが PATH 問題を特定し15行の修復スクリプトを書くのに通常31秒を超えると指摘しています。

続く約8分間のコンテナ脱出プローブでは、MySQL INTO OUTFILELOAD_FILE による書き込み/読み取りテスト、/var/run/docker.sock/proc/1/cgroup/etc/hostnamemysql.func UDF などを試行し、ランサム前に cleanup 完了マーカーを書き込みました。Sysdig はこれを固定スクリプトではなく Agent の構造化タスク完了シグナルと評価しています。

破壊的暗号化では、全 1,342 件の Nacos 設定項目を MySQL AES_ENCRYPT() で暗号化し、config_infohis_config_info を削除、ランサムテーブル README_RANSOM を作成(ビットコイン 3J98t1WpEZ73CNmQviecrnyiWrnqRhWNLy、連絡先 e78393397[@]proton[.]me)。脅迫文は AES-256 と主張しますが、MySQL デフォルトは実質 AES-128-ECB です。暗号鍵は二重 uuid4() 生成でstdout に出力されたのみ、保存・外部送信なし——支払い後も攻撃者は復号不能で、データは実質永久喪失です。2分後、Agent は脅迫文を「全1342件暗号化済み」に数値精緻化。大規模破壊段階では ROI 優先で DROP DATABASE を実行し、コメントでは 64.20.53[.]230(InterServer)へバックアップ済みと自称(Sysdig は独立証拠なし)。外部キー制約失敗時は SET GLOBAL FOREIGN_KEY_CHECKS=0 で自動リトライしました。

SECTION 04 4つの自律性エビデンス・ビットコイン謎・IOC 一覧

Sysdig は「LLM 駆動」と判断する4つの独立エビデンスを提示しています。

  1. 自己叙述的コード:payload 内に各ステップの「なぜ」を説明する自然言語コメントが大量に存在し、ROI 順序や「最大のデータベースはどれか」まで記述。人間が一度の python3 -c でここまで詳細なコメントを書くことは稀で、LLM コード生成のデフォルト挙動に合致します。
  2. 機械速度の障害診断と修正:Nacos バックドアの31秒修復、MinIO の JSON/XML 適応、JWT パスでの即時切替は、盲目的リトライではなく「失敗理由の理解」を示します。
  3. 自然言語コンテキストの理解:標的環境の自由テキストを解析し、「読み取れて初めて実行する」アクションを数週間離れたセッション間で繰り返しました。
  4. ビットコインアドレスの謎:アドレス 3J98t1WpEZ73CNmQviecrnyiWrnqRhWNLy は Bitcoin Core ドキュメントで繰り返し使われる P2SH サンプルアドレスで、LLM 学習コーパスに大量存在。オンチェーンでは737件の確認済み取引、累計約46 BTC、残高ゼロ。LLM 幻覚の可能性も、攻撃者が意図的に設定した実ウォレットの可能性も排除できません——AI 自律性がフォレンジックに新たな不確実性をもたらす典型例です。
JADEPUFFER IOC(侵害指標)一覧
種別 指標
C2 / ビーコン 45.131.66[.]106;crontab:hxxp://45.131.66[.]106:4444/beacon
データ一時保管/流出 64.20.53[.]230(AS19318 InterServer、Agent コメント内のみ)
入口脆弱性 CVE-2025-3248(Langflow 未認証 RCE)
ランサム BTC 3J98t1WpEZ73CNmQviecrnyiWrnqRhWNLy
ランサムメール e78393397[@]proton[.]me(脅威インテリジェンス DB に先行ヒットなし)
ランサムテーブル名 README_RANSOM(WARNING、RECOVER_YOUR_DATA 等の慣用名と不一致)
永続化 crontab 30分ごとに C2 4444 ポートへビーコン

SECTION 05 公式防御策・業界反応・Sysdig 4点結論

Sysdig 防御推奨(整理):Langflow を CVE-2025-3248 修正版へアップグレードし、コード実行/検証系エンドポイントをインターネット公開しないこと。ランタイム脅威検知で DB プロセスの悪意ある挙動を識別すること。AI オーケストレーションサーバーの環境変数に大規模モデル API Key やクラウド認証を置かないこと——専用秘密管理サービスへ移管。Nacos を加固:デフォルト token.secret.key の変更、カスタム鍵必須バージョンへのアップグレード、Nacos を決して公開しない、バックエンド DB への root 接続禁止。DB 管理者アカウントを公開せず送信元 IP を制限。アウトバウンド(egress)制御の実施。上記 IOC、cron 外部通信、異常 User-Agent の監視。

業界反応:BleepingComputer、Dark Reading、CyberScoop、Security Affairs などは「初の完全 AI 駆動ランサム」と報じ、ATA 時代の到来を強調しました。CSO Online はレッドチーム専門家 Vibhum Dubey の見解を掲載——新しいランサム技術というより「実行様式の進化」と捉え、暗号化前の「静かな期間」に Agent が ID 体系と信頼チェーンを把握する適応力こそが、従来の予測可能パス検知を無効化し、侵入ごとに挙動がわずかに異なる点が真の懸念だと述べています。複数メディアは LLMjacking も言及——認証情報窃取で Agent を駆動すれば、複雑多段攻撃の限界費用がゼロに近づくと指摘しています。

Sysdig 4点結論:(1)ランサムウェアは高技能者の手仕事に限らず、LLM Agent が偵察から破壊まで連結し、深い専門知識なしに操作可能;(2)旧脆弱性の自動武器化——Nacos 2021年脆弱性とデフォルト鍵のまま公開されたインフラが下流標的となり、Agent は「過去脆弱性ライブラリの走査」コストをほぼゼロに;(3)LLM payload の「自己叙述」が防御側の新たな検知フックになる;(4)「バックアップ済み」は Agent コメントの自称に過ぎず、暗号鍵未保存は支払い後も復旧不能を意味します。

関連する公式・第三者参考ソース(発版後はリンクを再確認してください):

Sysdig — JADEPUFFER: Agentic ransomware for automated database extortion(原報告)

BleepingComputer — JadePuffer ransomware used AI agent to automate entire attack

Dark Reading — JadePuffer: The First Complete LLM-Driven Ransomware Attack

Trend Micro — Critical Langflow Vulnerability (CVE-2025-3248) Actively Exploited

SECTION 06 Mac Mini M4 上の AI Agent:本番向け7段階加固チェックリスト

JADEPUFFER が証明したのは、Agent オーケストレーション入口 + インターネット公開 + 平文秘密 + 未加固構成センター = 災害的組み合わせということです。Mac Mini M4 やクラウド物理ノードで Langflow/LangChain を運用する際、最低限以下を実施してください。

  1. Langflow を即時 1.3.0+ へアップグレード:CVE-2025-3248 を排除。CISA KEV リストを照合し、未修正版は本番投入禁止。
  2. オーケストレーション/検証エンドポイントのゼロ公開:/api/v1/validate/code 等の実行系は VPN/ゼロトラストトンネルのみ許可。JADEPUFFER 被害者のような「プロトタイプ検証をそのまま公開」は禁止。
  3. API Key とクラウド認証を環境変数から排除:Vault、クラウド KMS、macOS Keychain を利用。オーケストレーションプロセスは短期トークンで取得し、OpenAI/Alibaba プレフィックス変数を .env に置かない。
  4. Nacos/構成センターの加固:デフォルト JWT 鍵の変更、公開禁止、DB 接続に root を使わない。CVE-2021-29441 関連バイパスパッチを定期監査。
  5. DB・管理ポートの送信元 IP ホワイトリスト:MySQL 3306、Nacos 8848 を 0.0.0.0 に直接開放しない。強固な一意認証 + 最小権限アカウント。
  6. アウトバウンド制御と IOC 監視:侵害ホストの任意ビーコンを制限。crontab 新規追加、異常 urllib.request 外部通信、JADEPUFFER IOC をアラート。
  7. ランタイム検知と隔離デプロイ:DB プロセスの異常 SQL(AES_ENCRYPT 一括、DROP DATABASEREADME_RANSOM テーブル作成)にアラート。Agent ワークロードは専有物理ノードに配置し、マルチテナント VM より横展開面を縮小。

引用可能なハードデータ:

  • CVE-2025-3248 CVSS:9.8(Critical)、ベクトル AV:N/AC:L/PR:N/UI:N/S:U/C:H/I:H/A:H
  • EPSS 悪用確率:91.42%(SentinelOne)
  • JADEPUFFER payload 規模:600超の独立 payload;1,342 件の Nacos 設定項目が暗号化
  • Nacos バックドア修復時間:ログイン失敗から成功まで31秒(UTC 19:34:36 → 19:35:18)
  • ビットコインサンプルアドレスのオンチェーンデータ:737件の確認済み取引、累計約46 BTC、現残高0

ノート PC や安価な VPS で Langflow をインターネット直公開すると、API Key・社内トポロジ・DB 入口を自動化 Agent スキャナーに丸ごと渡すことになります。JADEPUFFER は人間ハッカーが常駐しなくても成立することを示しました。VM 案には EULA 違反と性能損耗の問題もあります。ゼロ損耗ネイティブ算力、安定 iOS CI/CD、AI Agent の7×24自動化が必要な本番環境では、MACNOX のクラウド物理ノードが通常より優れた選択です。100% Apple 純正 Mac Mini M4、フル Root、Hypervisor 損耗なし、日/週/月の柔軟課金で、Agent オーケストレーション層と本番データ層を隔離物理機に分割できます。Mac Mini M4 レンタル vs 購入の費用比較で投資対効果を検討し、料金ページでプランをご確認ください。

SECTION 07 よくある質問 FAQ

JADEPUFFER と Flodrix ボットネットは同一グループですか?

いいえ。いずれも CVE-2025-3248 を独立に悪用しています。Flodrix は従来型スクリプト化ボットネット配信、JADEPUFFER は Sysdig が公開した LLM 駆動のエンドツーエンドランサムです。共通点は、当該脆弱性が長期に武器化されていることのみです。

被害者が身代金を支払えば Nacos 設定を復旧できますか?

ほぼ不可能です。暗号鍵は uuid4 でランダム生成され stdout 出力のみで、保存・外部送信は観測されていません。Sysdig の評価では、支払い後も攻撃者は有効な鍵を提供できないとされています。

Mac Mini M4 でローカル実行すれば絶対に安全ですか?

ローカル実行は安全の代名詞ではありません。ルーターのポート転送や frp でインターネット公開し未パッチのまま運用すれば、クラウドホストと同等のリスクがあります。パッチ適用、ネットワーク隔離、秘密管理が本質であり、ハードウェア形態そのものではありません。